AIが変える鍼灸治療:効率的な学びと患者対応の新時代

鍼灸師としてのキャリアを歩むには、専門学校を卒業した後も独学で技術を磨き続ける必要があります。現在のところ、鍼灸師には研修制度が整っておらず、現場での実践を通じて経験を積み重ねていくことが求められるのです。そのため、問診や治療後に効果が十分でなかったと感じた場合、自宅で治療計画を再考し、さらに学びを深めることが日常茶飯事となります。

ただし、すべての情報を一人で管理し続けるのは困難であり、調査や情報収集にかかる時間は膨大です。そこで、近年注目されているのが人工知能(AI)を活用した治療サポートです。治療案の提案や関連情報の検索をAIに任せることで、調査の負担を減らし、効率的な学びと患者対応が可能になるのではないでしょうか。

こうしたAIアシスタントの活用により、鍼灸師はこれまで以上に質の高い治療計画を素早く立案し、患者に寄り添った治療を提供することが可能になります。技術の進化を取り入れた、効率的な治療環境の構築が進んでいるのです。

患者様の症状

87歳女性
左目は緑内障により見えない。右目はかすんでいる。
右耳は聞こえない。左耳は、補聴器でなんとか聞こえる。
5年前、心臓弁膜症と診断された。
去年、変形性股関節症と診断された。

舌色は紅、舌苔は剥落していてほとんど無い。
舌形は光滑である。
呼吸は太息でためいきが多い。
脈は浮いていて拍動を強く感じる。
六部定位の尺が弱く感じる。

睡眠は5時間ほど眠れる。夜間尿は1晩に2回くらい。

主訴として左大腿の外側と後面の痛みと重だるい感じがする。
左の後頭部、経穴でいうところの脳空あたりがジンジンした感じ
たまに横揺れのめまいがする。
眼が見えづらく、耳も聞こえづらいため、気分が塞ぎがちである。

GPTsに質問してみる

前項の内容を元にGPTsのTodd’s Acupuncture Assistantに鍼灸の治療プランを聞いてみた。

GPTsは特定用途向けにカスタマイズされたChatGPTです。ここで解説するGPTsは鍼灸師のアシスタントをしてくれるチャットボットです。

ChatGPTでGPTを探す

  • ChatGPTの左メニューから「GPTを探す」をクリックして
  • Todd’s Acupuncture Assistantを探す

ここでは、Todd’s Acupuncture Assistantを使用します。Todd’s Acupuncture Assistantを検索窓に入れ、Todd’s Acupuncture Assistantのアイコンをクリックします。

  • チャットを開始するをクリックする

Todd’s Acupuncture Assistantのウィンドウが開くので「チャットを開始する」をクリックします。

GPTs:Todd’s Acupuncture Assistantに質問する

87歳女性
左目は緑内障により見えない。右目はかすんでいる。
右耳は聞こえない。左耳は、補聴器でなんとか聞こえる。
5年前、心臓弁膜症と診断された。
去年、変形性股関節症と診断された。

舌色は紅、舌苔は剥落していてほとんど無い。
舌形は光滑である。
呼吸は太息でためいきが多い。
脈は弦脈である。
六部定位の尺が弱く感じる。

睡眠は5時間ほど眠れる。夜間尿は1晩に2回くらい。

主訴として左大腿の外側と後面の痛みと重だるい感じがする。
左の後頭部、経穴でいうところの脳空あたりがジンジンした感じ
たまに横揺れのめまいがする。
眼が見えづらく、耳も聞こえづらいため、気分が塞ぎがちである。

これらを踏まえ、鍼灸の治療プランを立てて下さい。また、足りない四診、その他が
あれば指摘して下さい。

GPTsからの回答

GPTs:Todd’s Acupuncture Assistantからの回答

この87歳女性の四診情報を踏まえ、鍼灸治療のプランを以下に提案します。まず、現状の情報から、以下の診断が考えられます。

診断

  • 陰虚:舌の紅色、舌苔の剥落、光滑な舌形、夜間尿が見られることから、腎陰虚が疑われます。腎は目と耳を支配するため、視力障害や難聴、めまいにも関連している可能性があります。
  • 肝腎不足:視力低下、耳の聞こえづらさ、ため息が多いなどの症状、また弦脈があることから、肝の不足も関連していると思われます。肝腎不足は視覚や聴覚、さらにはめまいや感情的な不調に影響を与えることがあります。
  • 気滞:気分の塞ぎやため息が多いことから、気滞が疑われます。特に気滞がうっ血している可能性があります。
  • 肝風内動:たまに起こるめまいは、肝風が内部で動いていることに起因する可能性があります。
  • 肝血虚:変形性股関節症や左大腿の痛み、筋肉の重だるさは、肝血虚による筋肉や関節の栄養不足が関与しているかもしれません。
  • 腎気虚:尺脈が弱いこと、夜間尿、股関節の問題、疲れやすさも腎気虚の一部と考えられます。

足りない四診

  1. 問診の補足:消化状態(食欲、便通、ガスなど)や寒熱感、発汗の状況を確認することで、より正確な診断が可能です。
  2. 望診:皮膚の色、顔色、体全体の状態なども診察し、臓腑のバランスを確認する必要があります。

治療方針

1. 治療の目標

  • 肝腎を補う:腎と肝の不足を補い、目や耳の機能を改善し、めまいや気分の塞ぎを解消する。
  • 気滞を解消:気の滞りを解消し、精神的な落ち込みやため息を改善する。
  • 肝血を養う:肝血を補い、関節や筋肉の栄養状態を改善し、痛みや重だるさを軽減する。
  • 肝風を鎮める:肝風を鎮めてめまいを軽減する。

2. 主な経穴選定

a. 肝腎を補う(腎虚・肝血虚を補うための経穴)
  • 太渓(たいけい)、腎兪(じんゆ):腎を補い、全体的な体力や視覚、聴覚を強化します。
  • 肝兪(かんゆ)、三陰交(さんいんこう):肝血を養い、視覚、筋肉の栄養補給に役立てます。
b. 気滞を解消する(気の巡りを良くする経穴)
  • 内関(ないかん)、膻中(だんちゅう):気の巡りを改善し、気分の塞ぎやため息を解消します。
c. 痛みと筋肉の重だるさを改善(痛みを和らげる経穴)
  • 陽陵泉(ようりょうせん)、足三里(あしさんり):股関節や大腿の痛み、重だるさを改善します。筋肉や関節の気血の流れを促進します。
  • 環跳(かんちょう)、承扶(しょうふ):股関節周囲の痛みに効果的です。
d. 肝風を鎮める(めまいを改善する経穴)
  • 風池(ふうち)、百会(ひゃくえ):頭部の血流を促し、肝風を鎮め、めまいを軽減します。

3. 補助経穴

  • 神門(しんもん)、安眠(あんみん):睡眠を改善し、全体のリラックスを促します。

鍼灸の施術頻度

  • 週に1回~2回のペースで治療を行い、体力が回復するのを見ながら調整します。長期的な治療が必要と考えられるため、患者の状態に合わせて治療を続けます。

漢方薬の併用

  • 六味地黄丸(りくみじおうがん):腎陰虚の改善に役立ち、視覚・聴覚の問題にも対応します。
  • 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん):目の健康を保つために有効です。
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):気分の塞ぎ、気滞を解消し、情緒安定に役立ちます。

以上の治療方針をもとに、患者の体調をモニタリングしながら、柔軟に対応していくことが重要です。

まとめ

AIを利用した治療案の提案は非常に有益であり、次回の診療で望診や問診を追加することを計画しています。これにより、治療の効率と効果がさらに向上することを期待しています。また、メリット、デメリットは以下にようなことが考えられます。

メリット

  • AIは患者の治療履歴や症状データを分析し、より効果的な治療方法を提案する。
  • 個々の患者に合わせた最適な治療プランを自動生成し、時間を節約できる。
  • 患者情報の不足を補完してくれる。欠けている情報の指摘をしてもらい、治療の効果を上げる。

デメリット

  • AIの使用には患者の個人情報が必要となるため、情報の保護と適切な管理が重要。
  • 個々の患者の独特なニーズに完全に対応できない可能性がある。
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