航空機や産業機械向けの精密鍛造部品で知られる遠藤製作所が、5月8日に2025年12月期の第1四半期決算を発表しました。売上は前年比6.0%増と好調でしたが、営業利益は53.4%減と大幅な減益に。短信発表後、株価は下落する展開となっています。
一見するとネガティブな決算にも見えますが、その背景には為替影響やタイ工場の人件費増、そして航空機分野での一時的な在庫調整といった一過性の要因が多く含まれています。堅調な航空機需要や子会社化した日亜鍛工とのシナジーなど、中長期的には明るい材料も揃っています。
本記事では、遠藤製作所の最新決算のポイントを分かりやすく整理し、今後の株価見通しと投資判断について解説します。
決算概要:売上増でも利益は大幅減
遠藤製作所が2025年4月30日に発表した第1四半期決算は、売上高45億91百万円(前年同期比+6.0%)と堅調でしたが、営業利益は2億22百万円(▲53.4%)、経常利益は3億1百万円(▲38.2%)、四半期純利益は1億35百万円(▲61.7%)と、大幅な減益となりました。
株価は短信発表直後から下落基調となり、市場では「減益ショック」が強く意識された印象です。
減益の背景:構造悪化ではなく“一時的要因”が中心
今回の利益減少は、同社のビジネスモデルに問題があるというより、一過性・外的要因によるものと読み取れます。
- 航空機分野での一部取引先による在庫調整
同社主力のファインプロセス事業において、航空機需要自体は堅調ながら、顧客の在庫調整により一時的に出荷が減少。これは中長期トレンドの反転ではなく、あくまでサイクル要因と考えられます。 - 為替と人件費の影響
円安の影響に加え、タイ工場における人件費の上昇や仕入価格の高騰が利益を圧迫。製造原価率が上昇し、売上総利益は前年より▲16%減となりました。 - 全社費用(間接費)の増加とM&A影響
2024年に子会社化した日亜鍛工の連結により、間接費・管理コストが一時的に増加。これが全社費用の膨張として営業利益を圧迫しています。
ネットキャッシュ82億円超、財務の健全性は極めて高い
注目すべきは、同社の現金及び預金が約87億円に達し、有利子負債はわずか5億円未満という点です。
これによりネットキャッシュは実に約82億円。自己資本比率も81.4%と非常に高く、財務的な余裕は国内製造業でもトップクラスに位置します。
この盤石な財務は、減益局面にあっても資金繰りの不安がなく、むしろ将来の成長投資や株主還元の原資として大きな武器になります。
株価見通し:一時的な売り圧力の先に押し目買いのチャンス
短信発表後は短期的な失望売りが出たものの、以下の要因から「株価下落=絶好の買い場」と判断する投資家も少なくありません。
- 減益要因が一時的であり、中長期では業績回復が見込まれる
- ネットキャッシュ82億円超の盤石な財務
- 航空機需要は回復基調で、主要顧客の調整が終われば再加速の可能性大
- 新規子会社(日亜鍛工)とのシナジーも今後の注目材料
今後、株価が950円〜1,000円前後で下げ止まりを見せるようであれば、中期目線での押し目買いは十分検討に値する局面と言えるでしょう。
まとめ:減益決算に惑わされず、中期視点で冷静な判断を
今回の決算は確かに減益でしたが、その内容を精査すれば、「構造的な衰退」ではなく「一時的なコスト上昇と出荷調整」によるものと見て取れます。むしろ、財務の安定性や業界需要の回復基調、企業の持つ技術的優位性を考慮すれば、株価下落は中長期投資家にとって好機とも言えるでしょう。
成長と安定を兼ね備えたニッチトップ企業の本領が、今後再び評価される局面に入るか、引き続き注目が集まります。
本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではなく、情報提供を目的としたものです。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。株式投資には元本割れのリスクがあることを十分ご理解の上、自己責任でご判断くださいますようお願いいたします。